Research

金属と分子から組み上がるガラスや液体による材料化学

Glass and liquid chemistries of metal-organic assembly for ionics, porous, and catalysis

金属-分子構造体によるガラスと液体の合成と機能

我々は無機化学錯体化学・固体化学を基盤とし、金属と分子からなる構造体のガラス液体といった不規則な相の開拓と物性、機能発現に取り組んでいます。

無数の金属と分子を化学結合で集合させることにより、多彩な分子性骨格構造が形成されます。配位結合でつなぎ合わせた構造は配位高分子、あるいは金属-有機構造体(Metal-organic framework, MOF)とも呼ばれ、材料として実用化に至っています。分子設計を通して得られる高次構造を制御するとともに、手に取るサイズのガラスや液体といった状態のマクロな物質形態まで対象とすることにより、これら不規則な相に内在する構造秩序の制御と機能発現に挑戦しています。現在の研究テーマの例は以下に挙げられます

金属-分子構造体の化学に基づいたCO2変換と貯蔵

増加を続ける地球上の二酸化炭素:CO2は、地球温暖化や海洋酸性化など環境問題の原因です。一方でCO2は地球上に普遍的に豊富に存在する資源でもあります。CO2を有用な燃料や材料に変換することは化学者の重要な課題です。我々は錯体化学や分子性構造体の化学に基づき、CO2を有用な材料に変換する研究を行っています。

有機-無機ハイブリッドによる柔軟多孔体の作製

無機と有機の複合体からなる物質のもうひとつの例として、ゾル-ゲル法などの液相法により作製される、有機-無機ハイブリッド物質が挙げられます。例えば、メチル基やビニル基などの有機置換基 R をもつ有機トリアルコキシシラン(RSi(OR’)3)を前駆体として用いると、無機部位と有機部位が分子レベルにおいて複合化した有機−無機ハイブリッド物質が得られ、有機官能基による機能発現や、無機物質特有の脆さの改善などが可能となります。

我々は、このような前駆体から透明な低密度多孔体(エアロゲル)を作製する手法を開発し、機械的な柔軟性や極めて低い熱伝導率を示す材料が実現できることを示しました。現在、この手法を応用した柔軟多孔体の作製・構造評価・応用研究を進めています。特に、効率の良い断熱材を簡単に作ることができるようになれば、化石燃料への依存度を減らし地球規模の環境・エネルギー問題解決に貢献することができると考えています。